【小説】『ジャガーのビッチュ』

以前、京都市動物園の動物図書館で物色していたら、
世界動物文学全集にジャガーを題材にした小説も載ってました。

『ジャガーのビッチュ』 (アラン・カイユ作/中村妙子訳/新潮社/1972年)

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(写真は単行本の表紙を帯ありと帯なしで撮ったもの)

ジャガーさんの生態に基づく内容ではなさそうだけど、でも読んでおきたいなぁと思い、
地元の図書館で探してみたところその全集がおいてあったので、借りて読みました。

おおまかにあらすじを書くと、
気まぐれに撃たれて瀕死の若い牝ジャガーのビッチュが、死に場所に生まれ故郷を目指して旅をして、
成り行きで彼女と遭遇したインディオの父娘がそれを仕留めるために追いかける…、というもの。

以下はネタバレを含めた感想です。

確かにジャガーの生態的には、あらすじからして全然違ってはいるのですが…、
そもそも生まれ故郷に戻ったりはしないですよね。縄張り持ってる動物だし。
その他、子育て中に親ジャガーがつがいで揃っていたり、幼すぎるジャガーが狩りをしたり、
いやいやいや、それはナイー(´∀`;)ノシ …と思う描写は終始あります。

他にも南米には生息していない動物が結構でてきたり(この辺は解説に載っていて、
読みながらあれなんかヘン?と思いつつも、はっきりとは自分では判ってなかったり^^;)。

というか細かい描写は「ありえなさ」でいったら漫画っぽいというか…、
主人公のビッチュも追いかけるインディオの父娘も、もう何回も死んでるよ!
傷の治り早すぎるよ!敵も微妙に弱くね?と思う場面だらけなのですが。

しかしながら、それをさしひいても読後感は思いの外よく、印象の強い作品でした。

単純な「(狩られる)動物vs(狩る)人間」という二元的な構図ではなかったり、
ビッチュもむやみに擬人化されてない辺りで、そういった印象を持ったのかもしれません。

構図的にすごくよくできてんなぁ…、と感心したのが、
インディオの父娘は、ジャガーを狩ろうとする立場であると同時に、
別の部族のインディオや白人のガウチョーに狩られる対象でもあるところ。

特に終盤手前の、父娘がガウチョー達と遭遇しそうになる場面は、普通に読んでてもハラハラしますし、
それにその時の父娘は追われているビッチュのポジションとも重なるので、その場面があることで、
どちらか一方に肩入れするような気楽な読み方はさせてもらえません。

ひいては、それがよいか悪いかは別として、
人間が名誉のために他の動物を狩るという行為は根源的なものだとも感じさせられます。

そして舞台であるアマゾンの大ジャングル。
その前には、ジャガーはじめ他の動物達も人間も等しく、洪水や野火に翻弄されまくる、
そして生かされもする、大変に小さな存在であることが全編を通じて描かれます
(ありえねぇwww 描写のてんこもりによって^^;)。

生命力の充満した舞台で、宿命的な哀しさと常に隣り合わせで、でもやっぱり生命力みなぎる登場人物たち。

最終的に、それまで率先してジャガーを狩ろうとしていた父親は、ふりかかる困難に打ち勝って
故郷へ近づいていくビッチュの凄さを次第に認めるようになり、自分の意思で彼女を仕留めることをやめます。
ストーリー的にはまあありがちなオチだとは思いますが、最後の一文がとてもよかったのです。

それまでの接近した描写から、突如として遠景になり、大ジャングルの存在を思い出させます。
それによる(お笑いレベルで)苦難の数々をふりかえると、個々の人間や動物達の存在の小ささ≒孤独、
が際だち、ひいてはそれに立ち向かうことがイコール生きることである、と感じる文章なのでした。

さて、主人公であるジャガーの名前、ビッチュというのは固有名詞ではなく、
ポルトガル語で「けもの」のインディオ訛りで、名前のとおり彼女には本能からくる行動の
描写のみで擬人的な個性がありませんでした。動物小説では珍しいらしいですが、
それがまた中立的な印象でよかったです。

インディオの父と娘のやりとりは、個人個人の人間同士のやりとりとして、興味深く読みました。
現在の日本人と変わりない、いたたまれなさも感じるような家族関係の細やかな描写なのでした。

父親がビッチュのことを認めて最終的に仕留めないことを選択するにあたっては、
これくらい立派でないと強い立場の相手からは認めてもらえないのかー、まあそりゃそうだよなー、
とも思い、そういう意味では別な意味での哀しさもはらみつつ(´∀`;)

なんか結構絶賛してる感じもしますが、実際に読み通すのは結構時間がかかりました
(ありえない描写もいっぱいあるし)。でも最初に読み終えた時、もう一回読みたい!と思いました。

返却時期を気にせずにもう一回読むのにというか、手元にもおいてて損はなかろうと思い、
結局は単行本を古本で買いなおしました。Amazonさんありがとう!

あっそうそう、表紙と挿絵の牝ジャガーのイラストが可愛い!です(´∀`*)♪
ついでに(でもないけど)、文章の中でビッチュの「すらりとした"長い体"」という描き方に萌えましたー。
長い手足とか書いてないのがスバラシイ。挿絵も肢短くてカオまるくて素敵!

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